昨今の社会情勢
2024年11月5日(米東部時間)、米国で大統領選挙の投票が始まりました。そして翌朝にドナルド=トランプ氏の当選が確実となりました。言うまでもなく米国では大統領の権限が最大で国家元首であり、その下の副大統領は上院議長も同時に務めます。それに次ぐ第三の重要人物が下院議長であります。つまりホワイトハウス、上院、下院の3つをすべて共和党が掌握したことになります。この状態を共和党のシンボルカラーから「トリプルレッド」と呼び、予算案や法案を成立させるには上下両院の可決が必要なため、大統領の掲げる政策が実現しやすくなりました。
実際にトランプ大統領は矢継ぎ早に政策発表を行っており、一部に混乱は見られるもののマクロ経済の見通しは概ね落ち着いているとの認識をエコノミストは示しています。今後の経済における予測として、米国ではAIを中心とする新しい産業の勃興が期待されています。他にIMF、WHOなど国連傘下の各種機関から距離をおいているのもこの政権の特徴です。その一方で、ロシアとウクライナ、ハマスとイスラエルなど紛争国同士の間に入り、本来国連が果たすべき、解決に向けた仲介の労をとろうとしています。トランプ政権下ではこのように大きな変化の波が次々と押し寄せてくるため、世界は固唾をのんで注視をしています。
さて足下の日本社会は戦後80年を経て大きく変貌を遂げました。昭和30年代から40年代の終わり近くの高度経済成長期には企業による正規の終身雇用が中心で、高齢者人口が少なく、また複数世代が一つの世帯、大家族を形成していました。しかし昭和、平成を経て令和の今ではこれらは過去のものとなりました。まずは先進国に比して経済成長は30年に渡って低迷をし、高齢化率は過去最高の29.3%に達しました(2024年9月)。雇用を見渡せば非正規社員が多数を占め、若年層の低所得が晩婚化・非婚化を促進し、合計特殊出生率は1.20と、こちらは過去最低を更新しました(厚生労働省/ 2024年人口動態統計月報年計)。今後は少子高齢化を大前提とした社会の再構築が求められます。
要介護認定率は年齢が上がるにつれ上昇し、特に85歳以上で上昇します。2025年度以降、後期高齢者の増加は緩やかとなりますが85歳以上の人口は2040年に向けて引き続き増加が見込まれており、医療と介護の複合需要を持つ高齢者が一層多くなることが見込まれます。入院患者数は全国的には増加傾向ですが、一方で入院日数の短期化が進み、病床利用率については低下が続いています。つまり入院患者の多くは施設や自宅へ戻っていることが予想されます。よって今後は増加する80歳~90歳代に多い入院医療体制と介護を一体的に提供できる体制とを強化しなければなりません。在宅医療提供体制の強化も待たれます。また専門外来よりも「超」高齢者を念頭に置いた「かかりつけ医機能」の充実も待たれます。これまでは病「床」や病「棟」の機能分化と連携に焦点が当てられていましたが、今後の診療報酬改定では医療機関(=病院)の集約を前提にした医療機関機能の分化と医療機関の連携を促す方向が示されると思われます。これらのことから引き続き充実が期待されているのが国策としての「地域包括ケアシステム」であります。医療も介護も福祉も総合的に確保しながら、住み慣れた地域で自分らしく人生の最後を迎えられるのが地域包括ケアシステムの目指すところです。今や地域包括ケアの対象は虚弱な高齢者だけでも、その身体的虚弱だけでもありません。社会へ包摂すべき対象として児童虐待、引きこもり、障がい者、貧困世帯なども取り上げられるようになりました。これらの視点から、介護・福祉の分野においても事業者の機能分化と連携から複数事業者の集約へと進む段階に入りつつあると思われます。医療サービスの提供においては、2017年度より地域医療連携推進法人を創設できるようになってます。地域医療のいわゆる"持株会社"のような位置付けとして、医療法人間の連携の強化が期待されています。社会福祉法人も地域医療連携推進法人への参加が認められているものの、医療法人が中心との印象はいなめません。「超」高齢社会となる2040年の我が国の将来を見据えたとき、ゆくゆくは社会福祉法人・医療法人の別なく、「地域包括ケア推進法人」のような、多様な法人が地域の中で連携していく形が望ましいと思われます。
このような社会情勢においてほくやく・竹山ホールディングスはどのような方針のもとで事業を運営すべきなのでしょうか。
個々の事業の自立と連携(Alliance and Autonomy)
私たちには複数の事業会社があり幾つかの分野に分かれて経営されています。医療、介護、福祉と保健はこれまで別々の制度として認識されることが少なくありませんでした。しかし地域包括ケアシステムの構築が進むにつれてこれらの制度間の垣根が年々低くなってきています。社会保障制度の内側で事業を営むほくやく・竹山ホールディングス内でも互いの事業分野の重なり合う部分が次第に広がってきています。
しかし個々の企業によってその沿革、経営資源、企業文化は異なります。これらは従来個々の事業分野に特化して強みとなったものです。そこで私たちの事業方針として「自立と連帯(Alliance and Autonomy)」を掲げます。自立は行き過ぎると「孤立」になり、連帯も過ぎると「依存」になりかねません。個々の事業分野での「強み」を維持・強化しながらも、相互協力によってより大きな競争力を獲得してまいります。
より健やかな社会へ(For a Healthier Community)
そして今後私たちが掲げるのは「より健やかな社会へ(For a Healthier Community)」というスローガンです。私たちを取り巻く市場環境は今後一層複雑化し激変することでしょう。武漢発新型コロナウィルスの影響が残る中、半導体を中心にした世界的な物資の不足とそれに伴う広範な物品価格の上昇、近隣諸国との安全保障上の問題が生じています。こうした状況変化を、しっかりと見定めながら、あらゆる事態に備え、「より健やかな社会へ(For a Healthier Community)」の歩みを進める。この崇高な任務に対し、いかなる困難にもひるまず、強い使命感を持って、たゆまぬ努力を続けていきたいと考えています。