昨今の社会情勢
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの侵攻は第二次世界大戦後の世界秩序を一変させてしまいました。そのウクライナでの軍事侵攻が膠着するなか、2023年10月7日、パレスチナ自治区のイスラム過激派組織ハマスが、イスラエルに向けてロケット弾などによる激しい攻撃を開始し、イスラエルもこれに応戦すると中東でもあらたな軍事衝突が発生しました。ハマスを支援するイラン等の国々とイスラエルを支持している米国を始めとした西側諸国との間に一触即発の状況が生まれています。経済的にも決済通貨を米国ドルから中国の人民元や金地金へ移行しようという動きがBRICsを中心にした「グローバルサウス」の各国で見られるようになり、安全保障面のみならず、経済的にも世界は「新冷戦」と呼べる分断状況となりました。我が国は西側陣営の一員として同盟国である米国と「グローバルパートナー」としてこの世界情勢に対峙しているところです。
日本社会は戦後70余年を経て大きく変貌を遂げました。高度経済成長期には企業による正規の終身雇用が中心で、高齢者が少なく、複数世代が一つの世帯を形成していました。しかし昭和、平成を経て令和の今ではこれらは過去のものとなりました。今後は少子高齢化を大前提とした社会の再構築が求められます。
そのために2025年を目途として完成が急がれるのが国策としての地域包括ケアシステムであります。医療も介護も福祉も総合的に確保しながら、住み慣れた地域で自分らしく人生の最後を迎えられるのが地域包括ケアシステムの目指すところです。今や地域包括ケアの対象は虚弱な高齢者だけでも、その身体的虚弱だけでもありません。社会へ包摂すべき対象として児童虐待、引きこもり、障がい者、貧困世帯なども取り上げられるようになりました。
2024年の診療報酬はこのような状況を受けて介護報酬、障害福祉を併せた「トリプル改定」となりました。この改定では医療・介護・障害福祉の連携が鍵となります。特に、患者や利用者の情報共有や連携方法、各関係機関の連携体制の構築などが重要視されています。適正な医療提供体制の構築をめざす第8次医療計画も2024年から2029年度までを対象に施行されます。
このような社会情勢においてほくやく・竹山ホールディングスはどのような方針のもとで事業を運営すべきなのでしょうか。
個々の事業の自立と連携(Alliance and Autonomy)
私たちには複数の事業会社があり幾つかの分野に分かれて経営されています。医療、介護、福祉と保健はこれまで別々の制度として認識されることが少なくありませんでした。しかし地域包括ケアシステムの構築が進むにつれてこれらの制度間の垣根が年々低くなってきています。社会保障制度の内側で事業を営むほくやく・竹山ホールディングス内でも互いの事業分野の重なり合う部分が次第に広がってきています。
しかし個々の企業によってその沿革、経営資源、企業文化は異なります。これらは従来個々の事業分野に特化して強みとなったものです。そこで私たちの事業方針として「自立と連帯(Alliance and Autonomy)」を掲げます。自立は行き過ぎると「孤立」になり、連帯も過ぎると「依存」になりかねません。個々の事業分野での「強み」を維持・強化しながらも、相互協力によってより大きな競争力を獲得してまいります。
より健やかな社会へ(For a Healthier Community)
そして今後私たちが掲げるのは「より健やかな社会へ(For a Healthier Community)」というスローガンです。私たちを取り巻く市場環境は今後一層複雑化し激変することでしょう。武漢発新型コロナウィルスの影響が残る中、半導体を中心にした世界的な物資の不足とそれに伴う広範な物品価格の上昇、近隣諸国との安全保障上の問題が生じています。こうした状況変化を、しっかりと見定めながら、あらゆる事態に備え、「より健やかな社会へ(For a Healthier Community)」の歩みを進める。この崇高な任務に対し、いかなる困難にもひるまず、強い使命感を持って、たゆまぬ努力を続けていきたいと考えています。